制作工程を大公開、今回は建具に鯨の絵を描きます。
下地
まずはサンドペーパーで調整した後、下塗り材のジェッソを全面に塗ったくります。
建具が反りますから、裏面にも同じようにジェッソを塗ったくります(裏面は後に塗装されます)
下書き
次に下書きを絵の具で起こしていきます。今回の仕上げは現代風のこってり仕上げなので、下書きは粗めかつ強めでオッケーです。
荒塗り、ルミライトの仕込み
下塗りを大雑把に塗っている初期状態。
ここで手間暇がかかるのには理由があります。
宇宙の絵と同じく、ルミライトで光らせるための準備も同時にやっているのです。
この絵の場合、光らせるのは夕焼けの空と海面の遠景部分。暗闇の部屋でブラックライトを照らせば、空と海の遠い部分がうっすらと赤く染まり、手前の鯨は真っ黒のシルエットとなる案配です。
最終的に日が差して明るくなる部分にルミライトが残っていればいいので、全体にまだ白っぽいこの状態でルミライトを仕込んでおけば、最終的に濃い色を塗り重ねたその隙間からぴかっと光る夕日色のルミライトが顔を出してくれるはず、という計画です。
塗り始め
ブラックライトの効果はオマケで、あくまで鯨主体の絵ですから、ややこしいルミライト合戦はそこそこに、本格的に描き始めます。
まずは背景の空、海の彼方の島、そして近景、鯨へと作業を進めます。
いろんな資料や頭の中にいる空の神様を頼りに描き進め、途中描き進めすぎてルミライトが消えすぎたな、と思ったらまた足して、さらに描き進めます。
描き込み
鯨を描き始めています。ある程度鯨はざっくり描いても構わない。なぜなら水しぶきがいっぱいあるから。
後半から先はその水しぶきをちょいちょいちょい、てんてんてんと描き入れていく楽しい作業になる。
尚、ここで「ちょいちょいちょい」などと言っているのは謙遜してるだけですので、クライアントの皆様は決して絵描きに対して「ちょいちょい、と描いてくださいな」なんて言い方はしてはいけません。
水しぶき
水しぶきやハイライトを入れはじめたらとたんに絵が生き生きしてきます。ほんと楽しいひとときです。
たまにルミライトも足しながら、たまにクジラ本体や背景を手直ししながら、説明不能の仕上げ作業に没頭です。
無事仕上がりました。
あとは背面の塗装とデザインガラスの嵌め込みをお願いして現場で取り付けるのみ。
最終的にはこのように収まったのでした。
初出:2010.08.16 細井工房